俺様社長の溺愛宣言
車の後部座席のドアを開けてくれた中島。俺はそれに乗り込むと、ドアは閉められ、中島は助手席に座った。

運転手は、外国人。

「…御崎社長」
「…どうした?仕事でなにかあったか?」

「…いえ、仕事は至って順調です。あの…プライベートな事を聞くのは失礼かと思いますが、どうしても社長が心配で」

中島の言葉に、零士の眉がピクッと動いた。

「…なんだ?」
「…本当にこれで良かったのですか?」

「…何が?」
「…渡辺さんの事です」

俺は何も言えなかった。

「…これで、諦めて、二度と会わないなんて、本当は、ずっと傍にいたいのではないかと思えてならないんです」

「…いいわけない」

俺の言葉に、中島がミラーごしに俺を見た。俺は、窓の外の流れる景色を睨みながら、話を続ける。

「…好きな女を手放すなんて、心が張り裂けそうだ」
「…それならなぜ諦めるんですか?」

「…それが、満里奈のお兄さんと交わした約束だからだ」
「…」

「…俺では満里奈の役に立てない。俺は医者じゃない。満里奈の為に、医者になったお兄さんの方が、満里奈の支えになると思ったからだ」

「…しかし社長「…もう言うな。決めたことだ…」

俺も、中島も、もう口を開くことはなかった。

…この先、満里奈以外の女を、本気で愛することなんて、ないだろう。

別にそれでもいい。

満里奈が、元気で幸せなら。

生涯、俺は満里奈だけを想って生きていくだけのこと。
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