以心伝心【完】
気付いたら真に電話をかけてた。
どうしても今声が聞きたくて、謝りたくて、無意識にかけてた。
電話には出ない。コールは鳴るのに取らない。3回かけ直した5回目のコールで真は出た。
『……なに』
不機嫌な声。と、少しくぐもった声。泣いてたんだってわかった。またそんな真に気付かされて後悔する。
アイツ相手に俺が行動しないでどうする。自分のことを一切話そうとはしないし、気持ちを伝えることもしない。
そんな真を3年も見てきてわかってるはずなのに、いつもこうやってほったらかして後悔する。少しでも気付いていたならしつこく聞くべきだった。
『なんなん?』
「今から迎えに行く」
『は?』
「だから、迎えに行く」
『くんな』
全部、即答。
なんで?って思うけど、今の真はこれしか返事しない。
そんなこと今はどうでもいい。事実を知った今、傍にいないわけにはいかないだろう?
「じゃあ、帰る」
『は?』
「帰るよ」
『・・・』
「続き、しよっか」
それでも返事は返ってこない。
それでもいい。真の気持ちを知った俺の方こそ、帰りたくてしょうがない。真に会いたくてしょうがない。
こんなんでこの先どうすんだ?って思うけど、それでも愛おしさは加速してく。
黙ったままの真も、何を考えてんのかわかんないところも、意外と可愛いことしてくれるところも、全部全部愛おしい。
それが真にとって、例え“友情”の愛情表現だったとしても、もう俺は嘘をつかない。こんなことをしてくれるあたり、脈ナシってわけでもなさそうだし。
「真、聞いてる?」
『聞いてる』
「待っててよ」
『・・わかった』
なんか、可愛い。ニヤけそうになる顔を掌で隠して堪える。
どんだけ甘いんだ、俺は。
「じゃあ、切るね」
電話を切って、とりあえず落ち着こうと深呼吸をすると気付いた気配。両サイドにはアヤと後藤の2人がニヤついてて気持ち悪い。
「んだよ」
「じゃあ、そゆことで」
「結ばれちゃって?」
「やだ、いきなり?!」
「もうヤるしかないでしょ!」
「やだぁ~」
「お前ら、うるせぇよ!!」
黙って聞いてりゃ好き勝手言いたい放題で盛り上がる二人の会話にイライラして怒鳴った俺。
んなこと言われなくたって!!って言いたかったけど、俺らまだ付き合ってねぇじゃん!って、現状にちょっとへこんだ。
びっくりして静止した二人を睨んで溜息をはいた。ちょっとウキウキした俺にも呆れて出たのもある。
そんな俺を見て、ごめんな?と謝ってくるアヤと後藤。
「あのね」
後藤が俺が怒ってると思ってなのか、おずおずと言った。
「あたしが言ったこと、真には言わないでね?」