悠久のシャングリラ


「そう。 運命の欠片は……あと二つ。
きっと見つけられるさ、きみたちならーー」


チラッと横目に、クイナが私を見た。

正確には、ような気がした、だ。

猫の面の下がどうなっているのか、
私にはわからないけれど。

不思議と見つめられた気がしたのだ。


(……え……?)


けれどそれもほんの一瞬の出来事ーー。

ふっと息を漏らし、慇懃に礼をすると、
彼は私たちに背を向け。


「近いうちに彼は目を覚ます。
……そんなに心配しなくてもいい」


こちらを振り返らずに、
そのまま出ていってしまった。

その大きな背中の向こうから聞こえた声は、
「安心していいよ」と励まされているような……。

いつもの彼らしくない声音だったーー。

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