悠久のシャングリラ


『僕は咲夢梨に従うよっ。
君と一緒なら退屈はしないだろうしね』


その隣に立つのは、
背が小さいのを気にしていた桜。

いや……、圭介(けいすけ)だろう。


『うん! 退屈なんてきっとしないよ!
ね、だからみんなで一緒に行こう?』




そして、咲夢梨と呼ばれた女の子……。
あれはーーー幼い頃の私だ。


『ねぇ。 行こうよ、隼人。
本なら川の近くでも読めるよ?』

『そんなに行きたいの?』


『もちろん!』と答える幼い私に対して、
隼人(はやと)と呼ばれた男の子が腰を上げた。

あの子も変わっていない。

胸に広がる懐かしさに、目を細めた。

本好きの隼人は、睡蓮の幼い頃の姿だ。

< 124 / 306 >

この作品をシェア

pagetop