悠久のシャングリラ


『ようこそ、お客人』

『ようこそ、我が主の館へ』


見た目はそっくり、まるで同じ子どもが
二人横に並んでいるような感覚を覚えたな。

その中で、はじめに口を開いたのは、
桜の方だった。


『……君たちは誰?
ここがどこだが知ってるみたいだけど』

『ここは、
我が主が創られた【クロユリの館】です』

『【クロユリの館】……。
君、聞いたことある?』

『い、いや。 まったくないな』

『それはそうとお客人。
お客人は自分の名前が言えますか?』

『は? 名前ってーー……。
……あ、れ……なんで……』

『じ、自分の名前が……わからない……?』


俺たちの反応に、
双子の子どもはニヤリと口角をあげた。

楽しくて仕方ないって言っているみたいで、
気味が悪かったのを覚えている。


『ふふふっ』

『ふふふっ』


二人揃って、いきなり笑い出す。

その笑い声が、
まるで館中に響いているようで。

例えるなら、……そう。
館も同じように笑っているような……。

ありえない話だけどな。

これはあくまで、
俺のたとえ話だから流してくれ。

< 14 / 306 >

この作品をシェア

pagetop