悠久のシャングリラ


『あ、や、やべえ!』

『お、おい! 行くぞ!』


血を見て焦ったのか、
一斉に逃げ出すいじめっ子たち。

それからのことはよく覚えていない。

怪我をさせてしまった事実が大きくて、
頭が真っ白になったんだろうな。


(でもあんたは……
なんでもない風に笑ったんだ。
おれを安心させるように……)


周りが敵だらけだったおれにとって、
あんたはまさに【奇跡】みたいな存在だった。


そしてこうも言ってくれた。


『変人の何がいけないの?
私が周りの人によくじゃじゃ馬って
言われるのと同じだよ!』

『お、同じ……?』

『うん! おんなじ!』

『………』



これは夢で、過去で、
既に過ぎ去った出来事のはずなのに。

幼いおれが握られている所と同じ場所が、
温かく包まれたような気がした。


『あ! ちょっと待ってね!』


いきなり駆けていった咲夢梨は、
手に何かの花を持って戻ってきた。


『はい、これ! 貴方にあげるよ!
私たちの【友情の証】にね!』

『【友情の証】……?
おれと……あんた、いや……きみが……?』

『うん! 一度話せばみんな友達だよ!』

『………』

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