千日紅の咲く庭で
私が小さいころから、お母さんが大切にしていた庭。
私の小さな頃の記憶にいるお母さんは、いつも庭でガーデニングをしながら微笑んでいる。

そしてお母さんが、あの日倒れていた庭。


ついこの間まで、あんなにたくさんの草花が所狭しと咲いていた鮮やかな庭は、もうそこにはなかった。


確かにお母さんが亡くなってからというもの、私はというと、自分を保つことで精いっぱいで、庭を眺める余裕なんてなかった。
最後に庭を見たのは、この間、岳と一緒にスイカ食べた時だっけ。


真夏の炎天下でこうなるのは仕方のないことなのかもしれない。

それでも私は、うろたえるしかなかった。

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