千日紅の咲く庭で
「あら、そうなの?花梨ちゃんのこと、岳が大事にしているって有名だよ。花梨ちゃんはただの幼馴染かもしれないけれど、岳はただの幼馴染だなんて思っていないかもね」

私が一気に顔を赤らめたのが分かったのだろう。
マスターは可笑しそうに肩を震わせる。

「だって、その証拠に」
「その、証拠…?」

マスターは私に少し手招きをすると、耳打ちでもするかのようにカウンター越しに顔を耳元に近づけて教えてくれた。

「この店に岳が連れてくる女の子は、岳が大切に想っている女の子だけだから」


もう私は、何も言い返せなかった。
心臓の音が、自分でも驚くほど速くなっていて、この音が目の前のマスターまで聞こえてしまっているんじゃないかとさえ思えてくる。


「何、話してたんだよ」
ようやく、岳が電話を終えて戻ってきた時、真っ赤になった私とマスターの顔を何度も視線を行き来させ、つまらなそうな声をあげた。

「秘密。ねっ、花梨ちゃん」

答えられない私にマスターは、まるで語尾からハートマークが出るんじゃないかと思えるほどの声色で答えると、私に軽くウインクをしたのだった。

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