千日紅の咲く庭で
「そうなんだ。チームでは、最近練習にもほとんど顔出さないし、岳に彼女が出来たって噂だったけど。」

練習に顔出せないのは、きっとわたしのせい。
だって、休日のほとんどを私に費やしてくれていたのだから。



「彼女だなんて。私はただの幼馴染です」
私は小さくなりながら、幼馴染だと矢野さんに答える。


「へぇ」
矢野さんは目を細めて、納得したように微笑んでくれる。

私は矢野さんの微笑みに、張り付けたような笑顔を作って返した。


だって、びっくりするほど自分で傷ついていたのだから。

自分で口にした、ただの幼馴染っていう言葉に。


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