千日紅の咲く庭で
「おい、何2人で話してんだよ」

ほかの選手と同じようにベンチへ水分補給に戻ってきた。口調はなんだかいつもより不機嫌だ。


「岳、怖っ。岳の彼女なのかなって思っておしゃべり。それよりお前、独占欲強すぎだろ。」

苦笑いしながら、答える矢野さんに、岳は切れ長の目でジロリと矢野さんを睨んだ。

「花梨、こいつ手ぇ出すの早いから、気をつけろよ。」

岳は喉を鳴らしながら、ドリンクを一気に流し込むと顎で矢野さんを指しながら私に伝えてくる。


「お前に言われたくねえよ。彼女、コロコロ変えている人のセリフとは思えないからな。さぁ、俺は練習に戻ろうかな。」

真剣な顔で私に忠告した岳に、反論した矢野さんは、ゲラゲラと笑い声をあげながら勢いよく私の隣から立ち上がった。



「そうそう、岳は本当に大切にしている女の子しか練習連れてきたことないから」

矢野さんがコートに戻る直前に耳元で囁かれた言葉に、私の顔が急に火照り始めた。


私は岳に気づかれたくなくて両手で両頬を押さえた。

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