千日紅の咲く庭で
思わぬことを教えてもらった矢野さんがコートに戻ろうと走っていく後姿をぼんやりと見つめる。

「おい、バカ花梨。まさか、矢野に惚れたか？」

怪訝そうな表情を浮かべる岳に、私は思わず勢い任せに首を横に振って見せた。

私の反応に岳は安心したような、満足そうな笑顔を浮かべたのを私は見逃さなかった。



矢野さんに言われた、サッカーに岳は大切な女の子しか連れてきたことないって言葉。

そういえばこの間、岳と一緒に行ったバーのマスターも同じようなこと言っていたっけ。


神様、岳の私に対する気持ち、ほんのちょっとだけ期待してもいいでしょうか？

もし神様がいるなら、今すぐにでも祈りたい気分になった。


「なんだよ、気持ち悪い」
私がそんなことを考えていたら、いつもの口の悪い岳に窘められたのだった。

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