千日紅の咲く庭で

こんな時、素直に一言謝ればかわいらしい女の子で、岳の機嫌も収まって一件落着だったのだろう。


それなのに。

やっぱりこんな時に限って、２９年間も岳と幼馴染という関係が、私を意固地にさせてしまう。
岳の売り言葉に、私の買い言葉。


「…っ、べ、別に良いじゃない!!!」

「はっ？」

頬を膨らませ、岳に反抗して見せた私の態度に、岳は一瞬怯んだような顔を見せたのだけど、すぐに眉間の皺を深くし、一層不機嫌な表情を浮かべる。

東谷君はというと、言い返した私に明らかにポカンと、驚きを隠せないとでもいうような表情を浮かべているのが、視界の隅に映った。

「どうして私が、岳にそんなこと言われなきゃいけないのよ。確かに、今日一緒にウォーキング出来なかったことは私が悪いけど、岳は私の彼氏でも何でもないじゃん」

私の言葉に、岳は押し黙った。
だけど、勢いのついてしまった私はそんな岳の様子には気が付いていなかった。