千日紅の咲く庭で
岳を落ち着けようと思って岳の袖を掴んだら、岳は私を冷たく睨みつける。


「今日、一緒に歩くって約束していたよな?花梨の家に迎えに行ったら留守だし、電話も出ないじゃん。」

「だって、それは…」


そんなこと今までだって何度もあったじゃん。

心の片隅で呟いたけれど、今の岳の剣幕には口を噤んでいたほうが正解みたいだ。



「仕方ないから1人で走りに出かけたら、なんだよ、これ。呑気に他の男と手繋いでデート中とか、見ていられない。花梨、ふざけるな!!」


岳の怒りの矛先は、どうやら東谷君から私に向けられたらしい。

ううん、多分違う。
ずっと最初から、岳が怒っていたのは私だったんだろう。


< 169 / 281 >

この作品をシェア

pagetop