千日紅の咲く庭で
だけど、やっぱり傷つけてしまったことへの後悔だけは心の大半を占めていて。

私はしなきゃいいのに、岳が何も言い返さないものだから、その場を取り繕おうとした。

言わなきゃいいって、冷静に考えたらわかるはずなのに。
どうして、岳の前だとこんなに冷静で居られないのだろう。


「岳の周りにはたくさん女の子がいる。岳はモテるんだから、好きな時に好きな人になった人と結婚すればいいじゃない?私、もう家族は居ないんだもん。今は岳が幼馴染で一緒に居てくれるけど、岳だって他の誰かと結婚したらそういうわけにはいかないでしょ?私だって、誰かと恋愛しなきゃ。誰かと結婚しなきゃ…。この先、もう1人ぼっちになるのは嫌だもん。耐えられない。」

私の言葉に、岳が息を飲むのが分かった。


「恋愛するチャンスを、岳が潰さないで。…お願い」


強がって岳を思い切り睨んでみたけれど、時すでに遅し。
もう涙は頬を伝ってしまっていた。

両手で拳を作って、力いっぱい握りしめた。
下唇も涙がこれ以上溢れてこないようにと強く噛みしめてみたけれど、そんな下唇の痛みよりも胸の痛みの方がもっともっと大きかった。

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