千日紅の咲く庭で
「…ごめん、花梨」

岳が小さく私に頭を下げた。
いつも私よりも体格だって態度だって大きい岳が、この時ばかりはとても小さく見えてしまった。

岳に謝って欲しかったわけではないのに、岳に謝られたらなんだか余計に悲しくなってきてしまう。



「ごめんなさい…」

もっと早く、私がこの言葉を口に出来ていたのなら、こんなことにはならなかったのに。


私は、一言謝るとその場に居たくなくて、逃げるようにして走り出した。


捻挫が治っていて良かった。
今日はヒールの低いパンプスで本当に良かった。

いつも岳とウォーキングの時だって、こんなに長い距離走らないのに、どうしてこんな時だけどこまででも走っていけるんだろう。


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