千日紅の咲く庭で
私たちは駅の道向かいにある、駅前広場の片隅に置かれたベンチへ移動した。

今日は下弦の月みたいで、月の周囲に柔らかに星が瞬いている。


「杉浦さん、どうぞ」
「ありがと」

近くの自販機から温かい缶コーヒーを買ってきて、私に手渡してくれた東谷君。
私が受け取ると、小さく笑った東谷君は私の隣に静かに腰を下ろした。


東谷君はブラックの缶コーヒーで、プルタブを開け一口喉に流し込むと、東谷君は小さく息を吐きだした。


「ごめんね。変なとこ、見せちゃって」

東谷君の横顔を眺めながら、私もコーヒーを一口飲みこんで、小さくなりながら頭を下げる。


「本当に、修羅場でしたね…」

私の言葉を否定することもなく、苦笑いして答える東谷君に私はますます小さくなった。


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