千日紅の咲く庭で
私は顔なんてもう涙でぐちゃぐちゃだったけれど、ゆっくりとその声の主の顔を見上げた。


「意外と足が速いんですね、杉浦さん」

楽し気に笑いながら柔らかな声を降らせてきたのは、岳ではなく東谷君だった。

まぁ、今ここで岳に会っても、どんな顔すればいいかなんて分からないのだけれども。

ネクタイを少し緩めながらいう東谷君の顔は、後方に置かれた照明が逆光となっていて、正直よくわからない。



「良ければ、ちょっと話しませんか?」
東谷君は私の顔を覗き込んでくる。

その表情は、柔らかな笑顔を浮かべていたけれど、断れない強いまなざしで見つめられてしまって、私は小さく頷くしかなかった。


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