千日紅の咲く庭で
「岳っ!!!」


私は岳の背中に向かって、思わず叫ぶようにして声をかけていた。


なんだか岳にもう会えない気がして、寂しさが一気に湧き上がってくる。


振り返った私に岳はやっぱり笑っていた。
その笑顔はやっぱり儚げで、私の不安な気持ちを煽る。


「花梨、お前なんて顔してんだよ」

その言葉、岳にそっくりそのまま言い返したいよ。

どうやら私の方も、ひどい顔しているみたいだ。
でも、今はそんなこと構っていられない。


だけど、言葉が思うように出てこないんだ。
2人の間を重たい空気が流れていく。

「もう帰るぞ」
「嫌だっ」

こんな時、やっぱりその空気に耐えられないのは岳の方みたいだ。

そんな岳はきっと珍しく私が引き留めてしまったものだから、きょとんとしている。


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