千日紅の咲く庭で
それなのに、岳は私の言葉に眉間に皺を深く寄せた。

「彼氏出来たからって、花梨の上から目線。なんかムカつく。」


えっ、彼氏?

今度はどうやら私の方がきょとんとする番みたいだ。

「えっ岳、何言ってんの…?」

私は自分でそこまで口にして初めて、岳が私と東谷君が付き合い始めたと勘違いしていることに思いを巡らせた。

「あのね、岳。私、東谷君と…」

付き合ってなんてないよ、って言おうとしたのに、今度は私の言葉を岳が遮った。



「俺、花梨のこと、ただの幼馴染みだなんて思ったことねぇよ。」

さっきまで帰ろうとしていたはず岳が、そこまで言うと私に近づいて来て、あっという間に距離を詰めてくる。

< 196 / 281 >

この作品をシェア

pagetop