千日紅の咲く庭で
□□

「ねぇ、どこに向かっているの?」

「秘密」


秋の夕日が空を茜色に染めるころ、岳は車で私を迎えに来てくれた。

岳の車は、私がいつも利用している最寄りの駅の裏通りを抜け、母校の中学校の前を走る。

って、このルートをもう3回もグルグルと回っている。
2回目は、道でも間違えたのかななんて思っていたけれど、岳の車にはカーナビだって装備されているし、こんな地元の道を間違えるはずはない。


岳の横顔を眺めてみたら、緊張でもしているのか表情は硬い。
私が少し不安になって、岳に何度か目的地を訪ねても、秘密の1点張り。


もう、本当にどうしてしまったんだろう、岳は。

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