千日紅の咲く庭で
昨日の情事を思い出し、また顔の表面温度が一気に上昇している気がする。


だけど、そんな私の様子なんてお構いなしの岳は、一人ベッドから出ると昨晩脱ぎ捨てていたシャツを着始めた。

「今日、せっかくの日曜だから一緒に夕食にでも出かけよう。」


「うん、分かった」

どうやら一度マンションに帰るつもりの岳に、なんだか少し寂しいと思いながらも渋々返事をする。


「なんだよ、寂しいなら寂しいって言えよ。」

シャツのボタンをかけながら、岳は私の顔を覗き込んだ。

どうやら岳には私の気持ちなんてお見通しらしい。

「別に寂しくなんか…」

「ちょっと用事済ませたら、早めに迎えに来るから」

頬を膨らませた私に、岳は私の頭を2回ほどなだめる様に撫でた。

もう、これだから私は岳に何も言えなくなるじゃん。

私がもう一度恨めしげに岳の横顔を見たことに岳は満足そうに整った顔を崩して笑ったのだった。

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