千日紅の咲く庭で
「岳、分かっているよな?花梨ちゃんのこと、最後までしっかり責任持つ覚悟はあるんだよな?」


いつも物静かで穏やかに笑って晩酌しているイメージのあるおじさんが、初めて見るような真剣な眼差しで岳に言い聞かせる。


「覚悟があるから、ここに一番に連れてきたんだよ」

ぶつくさとおじさんに伝えた岳は、照れ臭かったのかグラスのビールを一気に飲み干した。


「岳、花梨ちゃん泣かせたら私が許さないからね」
岳がビールを飲む様子を眺めていた美知おばさんが鼻を啜りながら念を押すように岳に言い聞かせる。

「もう、全く。誰の親なんだよ」

ぶつくさと呟く岳の言葉に嫌味なんて全く含まれてはいなくて、それが岳の照れ隠しなんだということはすぐに分かった。


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