千日紅の咲く庭で
Ivy【番外編】
3月14日、土曜日。

今日は朝から雲一つない良い天気。
外に出るとまだ少しだけ寒いけれど、確実に春に近づいている気配を感じる。

「晴れてくれて良かったぁ。私の日頃の行いがいいからかな」

「それは、どうだか」

岳の車の助手席に乗り込みながら、冗談を口にすると岳は鼻で笑った。

「素敵なホワイトデーになりそうだね」

「そうだな」
「もしかして、岳緊張している?」

「別に、そんなわけないだろ」

笑顔で返事をしてくれた岳の表情がなんだか少しこわばって見えたと思ったのに。

この時、私は知らなかったんだ。
この日が、とても素敵な一日になるってことを。


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