千日紅の咲く庭で

「でも、本当に良かったのか？写真だけで」

「うん」

家の前の路地を曲がり、大通りに車が出た頃、岳がポツリと私に尋ねたから、私は窓の外を見つめて小さく頷いた。

「そっか」

あの時と同じ、岳の小さな寂しさがにじみ出た声がやけに耳に残って離れないでいる。


幼馴染みの関係が恋人同士に変わって１か月ほど経ったころのこと。
岳に結婚式をどうしたいかって尋ねられていたんだった。

「式はしなくていいや。ほら、私って、両親だっていないし、親戚だって疎遠でしょ？」


努めて明るく、無理矢理口角を挙げて笑ったこと気づかれませんように、そう思いながら笑って見せたのに、岳は困ったように眉を下げたんだっけ。

「そっか」


そう、結婚式はしなくてもいいと言ったあの時と同じ声。