千日紅の咲く庭で
別に岳と結婚したくないわけではない。

ううん、むしろ今すぐにでも結婚したいくらいだ。

小さい頃から憧れたウエディングドレスだって、着たくないわけじゃない。だって、例にならって私だって一応、女子力低いけど女の子なわけだし。


お母さんが生きていたら、バージンロード歩く姿見せてあげたいなって思っていたんだけど。そんなお母さんだってもういない。

招待できるような親戚なんていない私にとって、いくら気心知れた郷原家との結婚だといっても気が引けてしまうのだ。

教会で新郎側の席にたくさんの人、新婦側には誰もいない、そんなの想像するだけで悲しくて、式はしないって口走っていたのだ。


岳には申し訳ないって思ったけど。

結婚式のことで岳に申し訳ないって思うたびに、「大切な人とみんなに祝福されて結婚すること」っていう小雪ちゃんから教えてもらった岳の夢を思い出して胸が痛んだ。


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