千日紅の咲く庭で
「ありがとうね、お父さん」

「おじさん」とつい最近まで言っていたのに、いつの間にか自然に「お父さん」といえるようになっていた。
初めて出来たお父さんという存在が未だになんだか不思議なのだけれど。

ついさっき岳にプロポーズされたドアの前まで到着した時、私はお父さんの横顔を見て素直にお礼を伝える。


「うちは娘が居なかったから、娘とバージンロードを歩くなんてできないと思っていたけど、夢がかなったよ」

お父さんは照れ臭そうに頭を掻く。

お父さんの言葉が本当なのか、嘘なのかなんて分からなかったけれど、本当はものすごく優しいのにこんな時に照れ隠しのようにいう所は、やっぱり岳はそっくりだと思う。

「花梨ちゃんにとっては、ただの近所の酒屋のおじちゃんだったかもしれないけど、小さい頃から成長を見ていたからなんだか本当の娘を嫁に出す気分だよ」

お父さんの言葉に、やっぱり目の奥が熱くなる。


「まぁ、我が家に嫁いでくるんだからなんだか不思議な気分なんだけどな」

もう、やっぱりこんな時の口調まで、岳そっくりだ。

やっと泣き止んだっていうのに、泣かせないでよ。お父さん。


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