千日紅の咲く庭で
-杉浦 花梨-
指先に力を込めないと今にも震えてしまいそうになりながら、婚姻届けに自分の名前を書いていく。

「そういえば、花梨の花の花言葉知ってる?」

「知らない。お母さんの実家は材木店だったらしくてね。高級な材木の1つだったから花梨って名付けたんだって聞いてたもん。」

間違えちゃいけないって思っているっていうのに、岳は私の耳元に話しかけてきた。

サインしている私と岳の様子を、みんなが注目しているっていうのに岳は緊張しないんだろうか。


「花梨の花言葉はさ、唯一の恋なんだって」

ようやくサインを終えた私に岳はそっと囁いて笑った。


私たちから婚姻届けを預かり、参列者に見せるように高々と掲げた牧師役の先生。
参列者から自然と拍手が沸き起こる。

私はその大きな拍手さえどこか遠くで鳴り響いていると感じてしまうほど、岳の笑顔をから目を離せないでいた。

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