千日紅の咲く庭で
「そういえば、花梨は小さい頃、うちに泊まりに来て必ず泣いてたよな」

思いだしたかのように岳が小さな頃の思い出を喋り始めた。
そんな恥ずかしい思い出、思い出さなくて良いのに。



「岳だって、うちに泊まって、おねしょしていたじゃん」

私の反論に、今度は押し黙った。みるみるうちに岳の顔が赤みを帯びてくる。
岳はもう耳まで真っ赤だ。


私は何だか勝ち誇った気がしてきて、懐かしい記憶を辿る。

「岳はよくいたずらして、美知おばさんに怒られてたよね。酒屋の空き瓶でボーリングしてたし」
「うるせ―。花梨だって、ままごとで俺に猫役させて、怒られてたじゃん?」


私の口撃に、岳も負けじと反撃する。


もういい大人になったというのに、小さな頃のままの口げんかが始まってしまった。

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