千日紅の咲く庭で
岳が帰ってしまうと、家の中は急に静かになってしまった。

お母さんが居なくなってから過ごす、初めての1人だけの夜。



夕方から降りだした雨は、徐々に強くなっている。
雨音すら妙に大きく聞こえてくる。


やけに広く感じるリビングで、テレビはただ流れているだけで、内容なんて頭に入ってこない。
ご飯だって食欲はないものの、昨日は美味しいと思ったのに、今日はなんだか味気ない。


今夜も寝つきが悪くて、いつも岳が淹れてくれたホットミルクを作ってみようと思い立った。
岳が作っている姿は毎日それとなく見ていたはずなのに、私が作ったものとはなんだか、味が違っていた。


ベッドでゴロゴロしながら、まどろんだり、小さな物音で目を覚ましたりを繰り返し、気付いたらもう夜明けだった。



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