千日紅の咲く庭で
私より20cm程高い岳のおでこの位置に、ちょっとだけ背伸びして指ではじいた。


「おい、馬鹿花梨!!」


仕返しにと思って岳のおでこを弾いたら、私の手についていた洗剤の泡が岳のおでこにくっついてしまう。

整った顔立ちの岳のおでこに泡。
しかもちょっと多めの水分を含んだ泡のせいで鼻筋の方へ流れだしそうになっている。


岳の呆気にとられた顔さえ、可笑しくなってしまった私は思わず噴き出した。


岳は私を眉間に皺を寄せて、一睨みしたものの、満足そうに笑っていた。


私は、岳の前で笑った日から、少しずつまた笑えるようになってきた。

岳は私がこうやって笑うと、やっぱりいつも満足そうに柔らかな笑顔で笑いかけてくれた。


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