千日紅の咲く庭で
「今日はありがとうね、東谷くん」

星の瞬く初夏の夜、私の家の最寄りの駅からの帰り道にある河川敷を2人で並んで歩きながら、素直に伝える。


「杉浦さんのおかげで、残業しないで済みました」
私の言葉に、東谷くんは愛くるしく少し照れたような笑顔を浮かべた。

「でも、こんな時間になっちゃったね」
「いいんですよ。杉浦さんは気にしないでください。僕が杉浦さんについていたかっただけなので」


少しだけ日に焼けた笑顔にえくぼを見せる。

きっとこの眩しいばかりの笑顔がマダムキラーと呼ばれる由縁なのだろう。


これまで、二人きりで東谷くんと話したことがほとんどなかった私は、その眩しい笑顔を見ながらそう思った。

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