千日紅の咲く庭で
暗闇の中に落ちてしまって、どこに落ちたか正確な場所なんて分からなかったけど、2人で種が落ちた方向に視線を移す。


「花梨はスイカの種飛ばし下手くそだったよな。見えない位まで飛んだって喜んでたくせに、気付いたら種なんて全く飛んでなくて花梨の服にくっついてたもんな」


からかうように言った岳の言葉で、小さな頃の記憶がまた1つ思いだされて私は頬が熱を帯びていくのが分かる。



「変なこと思い出さないで」

頬を膨らませた私が、岳の横顔を盗み見る。


岳は私の反応に満足そうな顔して笑って、大きな口を開いて、美味しそうにもう一口スイカを頬張った。

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