千日紅の咲く庭で
「岳、ありがとね」

岳の横顔から、千日紅の咲く庭の片隅にもう一度視線を戻す。

一口だけかじったスイカを両手に持って、私はポツリと岳にお礼を言った。


「ん?」
私の言葉で岳が私の横顔を見つめたのが分かったけれど、私はそれに気付かないふりして庭の片隅から視線を逸らさずに続けた。


「岳があの日から、私と一緒に居てくれなかったら、私きっと今頃…」


今頃、私どうなっていたか分からないよ。
そう言いたかったのに。


「ばーか。」
千日紅の咲く方向を見つめながら言った私の言葉を、岳はいつもの口調で遮った。

私の言葉をかき消した岳の声は、少しだけ上擦っていた。



「岳が幼馴染で居てくれてよかった」

私の横顔を見つめていた岳に、むりやり笑顔を作って振り向いた。

岳は一瞬傷ついたような顔したかと思うと、フンって鼻を鳴らして顔をそむけた。


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