千日紅の咲く庭で
「そんな昔の話、今さら思い出すなよ、バカ花梨」

言葉の続かなかった私を、岳は気付かないふりでもするように、咳払いを1つしていつもの口調に戻ってしまった。

少しだけ、岳の顔が赤らんでいるように見えたのは私の気のせいだったのかもしれない。


「ほら、行くぞ。」

私の言葉なんて待たずに、岳は私の隣を颯爽と走り抜けた。

岳は20m程先まで急に走ると、私の方を振り返って、顎で早く来るようにと促した。


「もう岳、待ってよ」

岳が急にいつもの調子に戻って、急に走り出してしまったものだから、私はそれ以上考えることもなく、岳の後を慌てて追いかけた。


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