intoxication
「んっ、んー・・・え・・・」


頭が痛い。割れそうなくらい。

脳内で七人の小人さんたちがせっせと働いてるみたいに。

つまり内側から叩かれてるみたいにガンガンする。


なんとか起き上がってみるとあたしは昨日と同じ服を着ていて、そこは一槻のバーのボックス席。

カウンターでは一槻が寝ていて。


「・・・え」


薄暗い店内。

腕時計は最後の記憶からして翌日の朝を指している。

なんであたしはここに居るんだろう。


「ったぁ・・・頭痛い」


わかることはあたしが二日酔いだってことだ。

前例からして酔っぱらって電車に乗ってそのまま一槻のとこに来た、ってところだろう。


ぐらんぐらんする世界にどうにか立ち上がり、カウンターの中まで行って水を汲んだときに思い出した。


―――ガシャンッ


濡れたグラスが手から滑り落ちて、そのままシンクで大きく割れたグラス。

フラッシュバックするのはあたしの嫌いな香水とセブンスターの混じった臭い。

そうだ。

昨日の夜、こんな風にあいつがあたしに投げつけたグラスは、床で粉々になった。


「んっ、ん・・・」


あぁ、腹が立つ。たまらなく腹が立つ。

まだ涙が出てくる。

泣いてはいけない。

泣いたら一槻が起きて、またあたしを馬鹿にする。

186センチも身長があるからってあたしのことを見下して、男を見る目がないだとか、馬鹿だとか、チビだとか、貧乳だとか―――。


「まぁた泣いてんのか、お前は」


ぐずっと鼻水をすする。

少しだけ滲んだ視界の中に、寝起きでボサボサの頭と、半分も開いてない目で、あたしを見つめる一槻が映った。

起きてきやがった。

低血圧で朝弱いくせに、今日に限って。


「オトコか」


うんと低い声で、一言そう呟いた。

あたしは頷かない。

手のひらで涙を拭って、一槻が溜息をつく。


「今度は何されたんだ」

「ずっ、・・・部屋に、女がいて、泣いて、怒ったら、ガラスの、コップ、投げられた・・・」

「あはは。ついにモノ投げられたのか」


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