魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


でも、と続けた。二人分の視線が、自分に向いているのが分かる。


「私、器用じゃないので一つのことにしか集中できないんです。いま頑張りたいと思うのは、五宮家でまずは半年間――契約期間が終わるまで、お仕えすることです」


手段がいつの間にか目的に変わっていた。普通ならそれを本末転倒だと指摘されるのかもしれないけれど、自分の胸中はいっそ清々しい。

握られた手に、ほんの少し、力がこもった。隣を見上げれば、濃紺の瞳が私を真っ直ぐ見つめている。


「それに……やっぱり、自分の力だけで夢は叶えようと思います。これが私の作ったものだってきちんと言えるように、頑張りたいんです」


誰かとの合作ではなくて、自分のものを。自分の手で掴み取る夢を。大切な人たちに、胸を張っていられる私でありたいから。


「だから、本当にごめんなさ――」

「あーあ。ほんと、わざわざ来たっていうのに」


再び謝ろうとしたところで、茜さんが声を張り上げた。演技じみた話し方で、気怠そうに彼は口を尖らせる。


「車かっ飛ばしてさー、ダサすぎじゃん。僕の誘い断るなんて君くらいだよ。全く」

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