魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
*
まるで地獄のような夏休みが終わった。
そう思っているのも私だけの話で、周りの人々はなんら変わらない、充実した夏を過ごしたことだろう。
明日から学校、という季節の変わり目の予感がする今日は、試用期間最終日――つまり契約の終了日だった。
だからといって特にルーティン業務が変わるわけでもなく、朝のミーティングで一応草下さんと共に「半年間ありがとうございました」と挨拶を述べたくらいだ。今日のうちに書類を書き直して本契約を結ぶことになるだろう。
そのまま蓮様と葵様、そして桜様が朝食のテーブルについた時、竹倉さんが声を上げた。
「おはようございます。お食事の前に恐縮ですが、本日は草下と佐藤の契約終了日です。蓮様、葵様。明日以降も契約を継続ということでよろしいでしょうか」
「うん! いいよー!」
葵様がはつらつと頷いて、草下さんを振り返る。草下さんも「ありがとうございます」と少し照れ臭そうで、非常に微笑ましい。
「かしこまりました。では本契約を、」
「竹倉」
堅い声が執事長の名前を呼んだ。伏せた目を動かすことなく、蓮様は次の瞬間、無慈悲にもこう言い渡したのである。
「佐藤はクビ。本契約は結ばなくていいから」
まるで地獄のような夏休みが終わった。
そう思っているのも私だけの話で、周りの人々はなんら変わらない、充実した夏を過ごしたことだろう。
明日から学校、という季節の変わり目の予感がする今日は、試用期間最終日――つまり契約の終了日だった。
だからといって特にルーティン業務が変わるわけでもなく、朝のミーティングで一応草下さんと共に「半年間ありがとうございました」と挨拶を述べたくらいだ。今日のうちに書類を書き直して本契約を結ぶことになるだろう。
そのまま蓮様と葵様、そして桜様が朝食のテーブルについた時、竹倉さんが声を上げた。
「おはようございます。お食事の前に恐縮ですが、本日は草下と佐藤の契約終了日です。蓮様、葵様。明日以降も契約を継続ということでよろしいでしょうか」
「うん! いいよー!」
葵様がはつらつと頷いて、草下さんを振り返る。草下さんも「ありがとうございます」と少し照れ臭そうで、非常に微笑ましい。
「かしこまりました。では本契約を、」
「竹倉」
堅い声が執事長の名前を呼んだ。伏せた目を動かすことなく、蓮様は次の瞬間、無慈悲にもこう言い渡したのである。
「佐藤はクビ。本契約は結ばなくていいから」