お姫様とお嬢様
しばらくして戻ってきた星野からタバコを受け取って火を付けた。



「血が出てますよ坊ちゃん。」

「坊ちゃんね…。」

「あっ、失礼しました。」



坊ちゃんのままでいたかったっつーの…。



素の俺でいれたら少しは彼女も俺の事を意識してくれたりしたんだろうか…。



「はぁぁぁ~…。」

「本気ですね?」

「本気ですわ…。フラれたの2回目…。どうしたらイイかわかんね…。」

「社長の気持ちもいつかは通じます。」

「はっ…。何を根拠に…。」

「長年社長を見続けてた年寄りの勘ですよ勘。」



樋山でも兄貴でもダメ。



素の俺は?



もう自分がどんな人間だったか忘れてしまう…。



誰だ俺は…。



「少しお休みになられたらいかがですか?自宅についたら声かけますので。」

「そうします…。」



ジンジンする唇のおかげで浅い眠りにしかつけなかった。



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