マザー症候群

 「それにしてもまいったよ」
 ビールを飲んで頬を少し赤めた波斗がぽつんと呟いた。
 「何がやの?」
 「お袋の後輩が作った先日の料理だよ」
 「何がそんなにまいったん?」
 「てっきりお袋が作った料理と思っていたのに。後輩が作っただって。俺の舌も焼きが回ったよ」
 「レシピがあればうちだって作ってみせたるわ」
 「長年お袋の味に親しんでいる俺がだよ。その俺が間違うなんて。情けない。長年お袋に世話になっているのに申し訳ない・・とほほ」
 波斗が大粒の涙をぽろぽろと流し始めた。
 波斗は泣き上戸だった。
 (泣くか。こんな事位で。泣きたいのはこっち。こっちの方や。このままだとプロポーズを言う気配は全くあれへん)
 (なぬ。食逃げ。これだけの料理作ったのに。あほぬかせ。そんなん絶対許せへんから)
 道瑠は波斗の涙を見ているうちに腹が立って来た。


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