マザー症候群

 「いたたたた」
 波斗が、強烈な一撃によろよろとよろけた。
 「出てけ。てめえの顔なんか金輪際見たくもないわ。はよ、出ていかんかい」
 ガッシャン。
 道瑠が、波斗に向かってプラスチックのゴミ箱を投げつけた。
 「何をするんだ。わかかったよ。帰るから」
 波斗が逃げるように部屋から出て行った。
 「波斗のあほんだら」
 道瑠が、波斗が出て行ったドアに週刊誌を投げつけた。
 「波斗のあほんだらが。何で結婚しようと言うてくれへんの。あほんだら。あほんだらが」
 そう言って、道瑠が泣き崩れた。ひとしきり泣くと、道瑠は不思議なほど冷静になった。
 「あかん。何てこと言うてしもてんやろ。波斗に謝らんと」
 道瑠が部屋を飛び出して、波斗の後を追った。
 「待って。待って」
 「波斗、待って」
 道瑠は靴も履かず裸足のまま全速力で駆けていた。


 
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