マザー症候群

 「悪いのは俺だ。お前の心を知りながら。優柔不断過ぎるんだ。もっと早く言うべきだった」
 と、神妙な顔で波斗。
 「何を?」
 道瑠は、次の言葉を待っていた。結ばれたい人は波斗だけ。と、心に決めたあの瞬間から。ずっとずっとずっと、待っていたあの言葉を。
 「道瑠。俺と結婚してくれ」
 「えっ、・・・」
 道瑠、余りに嬉しくて言葉が出てこない。
 「結婚して欲しいんだ」
 ありきたりだけれど、何とこうごうしい言葉だろう。こんなに耳障りの良い言葉があっただろうか。
 道瑠。感激。のち感激。のちのちまた感激。
 「わあ~ん」
 道瑠は泣いた。ただただ赤子のように無心に泣いた。
 嬉しい。と言うより嬉しいのてっぺん。人生を生きてきてこんなに嬉しい事があっただろうか。
 道瑠はふつふつと湧き上がる幸福感をじわっと噛みしめていた。

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