高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「関係者以外は立ち入りを禁じています。お引き取り願いますか? さもないと警備員を呼びますよ」

藤崎社長の荒げた声に、ケバ子は急に態度を小さくした。

「……わ、わかったわ。ヨリに近づかないって約束して」

「その前にあなたが時頼に近づかないでもらいたい。他のオトコ関係がなくなったからって元サヤに戻ろうとしてるって、時頼から直々に相談を受けましたが」

整然した藤崎社長の言葉に顔をひきつらせながらケバ子はごくりとつばを飲み込んでいた。

「時頼のこと、金目当てで付き合うのはやめてもらいたい。言いたいことはそこまでですが、反論でも?」

「……帰るわよ。もう顔もみたくないわ」

まだ怒りは収まってはいないようだったが、藤崎社長のにらみにかなわなかったらしく、しおらしく帰っていった。

事務所内に静寂が訪れたが、藤崎社長はずっとわたしを見下ろしたままだった。

「社長……、大丈夫でしたか」

「カバンで叩かれてしまいましたが」

「ご、ごめんなさい」

「いいんですよ。大事なつむぎさんを傷つけさせたくないので」

「……社長」

軽く抱きしめてわたしが顔をあげると、すぐに藤崎社長はわたしから離れた。

「やっぱり時頼とあのあと、一緒だったんですね」

「……ごめんなさい。二階堂さんに連絡して助けてもらいました」

「そうでしたか。やけに星彦が張り切ると思っていたら」

はあ、と小さくため息をもらす。

「頼りないでしょうかね、僕は。つむぎさんにとって」

「……それは」

「もういいですよ。お疲れ様でした。また明日もよろしくお願いしますね」

藤崎社長はドアを開け、事務所の外へ追い出すかのようにわたしの背中をぐっと押した。
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