高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
さおりさんの話が出たとき、藤崎社長は急にしおらしくなった。

「その話はもういいだろう」

「兄貴の態度次第なんだよ。つむぎ、今からでも遅くない。兄貴はやめておけ。これ以上関わらないほうが身のためだ」

「……ごめんなさい。わたしのせいで」

「あやまらなくたっていいだろう」

藤崎社長は黙りこくって、時頼さんが目くじらを立てていた。

「わたしが会社に来なければ兄弟で喧嘩することなかったじゃないですか」

「そうですけど、つむぎさんは関係ありませんから」

「ごめんなさい。今日は早退させてください。明日、続きをしますから」

二人の姿を見ないふりをして、カバンに詰め込み、事務所をあとにした。

元はと言えば、わたしの態度に問題があるんだ。

藤崎社長との関係をきっちりとしてこなかったから、時頼さんがあんなにわたしに向けて恋愛の圧力を高めていってしまった。

明日からどうしよう。それよりも出向先でやっていけるかが不安になってきた。

夕刻を過ぎ、部屋の片付けをしながら、物思いにふけていると、部屋のチャイムが鳴った。

もしかして、由基なのかな、と思って急いで玄関の扉を開けた。

「助けてください」

「どうかしましたか?」

藤崎社長だった。手にはボストンバッグを持っている。

「お邪魔しますよ」

「えっ、どういうことですか」

わたしの脇をすり抜けて、部屋の中へと入っていった。

「しばらくの間、厄介になりますよ」

「あの、どうして」

「どうやら女のひとを連れ込んでいるみたいでしてね」

時頼さんならやりかねないな、と思う反面、どうして藤崎社長がわたしの元を訪れなければならないのか。
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