高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
現状をいろいろ整理しなくてはいけないのに、藤崎社長は悪びれることもなく、ボストンバッグの中身を取り出す。

あの、と声をかけると、藤崎社長は手をとめ、首を傾げていた。

「どうしました?」

「もしかしたら彼氏が来るかもしれませんが」

「連絡はとっているんですか? 最近」

現実的な答えに言葉が出なかった。

あれからメールを送ってみても何も返信がこない。

付き合っている意味がないとわかってはいるけれど、まだ別れを切り出したわけではないし、というかすかな希望だけは頭の片隅に残っている。

「そこまで放置されているとは、つむぎさんが不憫でなりませんね」

「そういうことじゃないですって。彼、突然来ることだってありますよ」

「そうですね。うまく立ち回りますよ。つむぎさんには決して危害をくわえさせませんから」

藤崎社長はタブレット端末を操作して、依頼主からこの案件に関してのお礼メールが届きましたよ、と白々しく報告してくれた。

「社長、あと、さおりさんのことなんですが」

時頼さんが口走ったあの女性の名前を出してしまった。

「もういいでしょう。そのことに関しては。仕事の支障になりますよ」

「だって大切なひと、なんですよね? さおりさん」

また口に出した瞬間、藤崎社長はわたしに唇を押し当てた。

「最初から飛ばしていたら、これ以上では物足りなくなってしまいますよ」

「……藤崎社長」

「まずは仕事をこなしましょう。僕の秘密を知りたければ」

そういって藤崎社長は頬に軽くキスをした。
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