高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
夜遅くに誰だと思い、ゆっくりと玄関のドアスコープをのぞく。

見覚えのあるスーツ、背格好に、顔立ち。

「つむぎ、いるんだろ。開けろよ」

ドンドンとドアを叩く。どうしようと思ったけれど、

「僕は奥にいますから、どうぞ」

と居間のほうから藤崎社長が冷静に声をかけた。

しぶしぶドアの内側の鍵を開ける。

「つむぎ〜、久しぶりだな。なんか色っぽくなったな」

由基だ。しかも、かなり酒くさい。

「ちょっとくるときは連絡してよ。最近まで全く連絡とれなかったじゃない」

「はあ? こっちはな、サラリーマンとしてまっとうな仕事してるんだよ。つむぎみたいにのっそり事務やってるわけじゃねえんだよ」

入ってこようとするので、両手で由基をぐいぐいと体を押し、中に入らないように阻止した。

「なんだよ。拒んで。そんなに寂しかったのか。わかるわ、あんなに自分から腰ふってたからな」

そんなこと玄関先で言わないで、とわたしがつぶやくも、今度は足元にあるきれいに磨かれた茶色の革靴に目を光らせた。

「んだよ、誰かいるのか!」

由基はわたしの体を押し返し、ずかずかと部屋の中へ入る。

止めようとして追っていくと、藤崎社長がソファに座っていた。

「はじめまして」

「誰だよ、こいつ」

「……出向先の社長」

「フジサキコンサルパートナーの藤崎ともうします」

「しゃ、社長……。ど、どうも朝倉由基です」

急にデレっとした態度から引き締まった顔をする。

「いつかお話を聞きたいとかねがね聞いていましたが」

「つむぎ、伝えてくれたんだ。俺のために社長に伝えてくれるだなんて、えらいなあ。かたつむぎだなんて言ってごめんよ」

と、わたしの肩を気安く触ろうとしたのですっと身をかわした。

「ったく、つれないなあ。いい機会だ。つむぎ、結婚しようか」
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