高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「け、結婚って。こんなところで、どうして。それに急だって」

わたしの部屋の中に不穏な空気が漂う。

わたしと由基をみつめる藤崎社長は顔色ひとつ変えていない。

「だって俺はつむぎの彼氏なんだから。つむぎだっていい歳だから考えてたろ。よかったじゃないか」

「だからってこんな」

社長のいる前でプロポーズなんて。

「社長からもいってやってくださいよ。どんくさいんですよ。それなのにあっちのほうはどんくさくなくて、やりまくりで困るんですわ」

と、由基はわたしに向けてゲラゲラと笑っている。

「僕にはいう権利はありませんが、つむぎさんが承諾するのならそれでいいのではないでしょうか」

「……わたしは」

「お、さすが、社長、話が早い。社長さんもこういってるんだから、お願いしますっていってみろよ」

「由基、わたしは……」

「何迷ってるんだよ。そっか、俺のことを気遣ってくれて、まずは商談が先だよな。社長、いい案件があるんですがね」

と、持っていたカバンの中からファイルを取り出す。

「続きは会社で伺います。プライベートな空間でビジネスの話はいかがかと」

「そうですね。ぜひ伺わせてもらいますよ。月曜の朝イチに」

「よかったら、社長、このあとどうですか? かわいい女の子がいっぱいいるお店紹介しますよ」

「遠慮しておきますよ。僕は用が済みましたので、このへんで」

と、藤崎社長はボストンバッグを持つと一礼して出ていった。

「ったく、つむぎのせいで社長怒らせたじゃねえかよ」

「……もう帰って」

「ああ。でも社長と大型のプロジェクトが契約できる。つむぎのおかげだ。成功したら結婚するからな」

由基は息巻いて社長を追うかのように部屋を飛び出していった。

目の前に置かれた食べかけのショートケーキをみつめて、胸が苦しくなった。
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