高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「契約彼女の件もおしまいですよね」

「ええ。もちろんです」

「これから真面目に働きますので、よろしくお願いします」

自分をごまかしているようで、なんだかじわっと涙があふれてきた。

「今度は時宗が泣かせてるじゃんかよ」

「大丈夫です。とっておきのボーナスを用意していますから」

「職権乱用ってやつじゃねえかよ」

「今日は特別だってことでね。行きましょうか、つむぎさん」

藤崎社長は強く手を取ると、わたしを社外に連れ出した。

「今日の仕事はキャンセルで。明日改めると伝えておいて」

「はいはい、ちゃんと伝えておくから、楽しんでおいで」

二階堂さんはクスクスと笑いかけながら手を振って見送ってくれた。

「あの、仕事は」

「僕にとって今が一番大切なんですよ」

会社近くの駐車場に連れてこられ、一番奥にとまっていた黒い外車に藤崎社長が乗り込んだ。

「仕事になりませんから。隣へどうぞ」

しかたなく助手席に乗り、車を走らせた。

「ようやく一人になったつむぎさんを正式に彼女にしたい」

「でも、藤崎社長には婚約者が」

「婚約者はいましたよ。婚約破棄になりました」

警戒心をあおがせるために、わざと情報を流したってことか。
 
「それからはずっと紹介してくれても興味がなかったのです。女は裏切るって」

対してプロポーションがいいわけでもない。わたしのどこに惹かれたんだろうか。

「でも、つむぎさんに出会って変わりました。この仕事が終わったらこのジャケットともお別れしようと思っていたんですよ」
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