高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
美容系の代理店のほかに個人の学習塾への学習アプリ開発の契約だったり、イベント企画会社のマネージメント管理ソフトについての相談だったり、個人でやっている雑貨屋のウェブサイトの再構築だったりと目まぐるしくて時頼さんについていくのでやっとだった。

外回りも無事に終わって、会社へ戻る途中だった。

蒸し暑かったオフィスから雲間にある日も傾き、外へ出て心地よい風に吹かれつつ、代理店からもらったお土産プラス時宗さんのカバンを持っていると、

「さっきからぼーっとしてるな」

「え、あ、あの」

突然わたしの前に立ちはだかり、背が高いから体をくの字に折るようにして顔を覗き込まれる。

息がかかるぐらいに顔が近いってば。

「歯切れが悪いな。つむぎ、お茶にするぞ」

「馴れ馴れしく呼ばないでください」

その言葉にかちんときたのか、時宗さんは近づいた顔を離してぷいっと前を向いて歩き始めたので、わたしもそろそろと後に続く。

時宗さんは後ろにいるわたしをちらりと何度も振り返りつつ歩く。

会社まであと少しの道で突然立ち止まって振り返った。

「じゃあ、そうだな。片桐、ああ、かたつむりだ」

かたつむりだなんて。

以前いた会社と変わらないじゃない。

心機一転頑張ろうと思っていたのに。

「……そんな言い方、やめてくださいっ!」

疲れていたのか、ついつい口走ってしまった。

周りに同じく営業で外回りをしているサラリーマン2人組がわたしたちの横を目を丸くしながら通り過ぎて行った。
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