高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「本気で怒ることねえじゃねえかよ。機嫌なおせよ」

「もういいですって」

こんなところでも嫌なあだ名で呼ばれないといけないんだろう。

「一息つかせてやる」

と、あと少しだった会社までの道から左へ一本細い路地に折れる。

立ち寄ったところは古い倉庫街でその中に古びたビルが立ち並んでおり、そのうちの1軒、空きスペースとなった1階を利用したカフェがあった。

ガラス張りの正面入り口の中は打ちっぱなしのコンクリート壁に無造作に置かれた形の違うテーブルと椅子がアートな感じを演出している。

パソコンを持ち込んで仕事をしているひとやラフな格好だけど真剣な表情で打ち合わせをしているグループがあり、第二の仕事場のような雰囲気だった。

コーヒーやパンの焼けるいい匂いが店内中に流れていくとここはカフェだったのか、といい意味で現実に戻ることができる空間だ。

空いていた席に時宗さんとともに向かい合わせに座る。

どうやら、ここもネット関係でお世話になっているらしい。

女性の店員さんが時宗さんをみるやいなや、いつもありがとうございますと会釈しつつ話し、また新作メニューを載せる際にはよろしくお願いしますと念を入れて答えていた。

やはり女性店員の目は時頼さんに釘付けだったけれど。

「何が欲しい? ケーキかそれともパフェか?」

と、わたしの目の前にメニュー表を突きつけた。

ありがたいことにデザートのページを開いてくれている。

「甘いもの出されてすぐに元どおりになろうと思わないでください」

「その手は食わねえって魂胆か」

時頼さんは、むすっとしながらメニュー表を自分のところへ引き戻し、メニューをじろじろとみている。

すぐさまさっき対応した女性店員がやってきた。

「アイスコーヒーと……シフォンケーキを。で、つむぎは?」

「……じゃあ、わたしも同じものを」

メニュー表を女性店員に渡し、時宗さんは少しご満悦な表情にわたしは少し吹き出してしまった。
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