高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「あ、あの、社長にご用件でしょうか?」

「社長? ああ、時宗ね。別に用はないね。今は君に用事」

「って、あ、あの」

「ごめん。ここの会社でお世話になってる二階堂星彦っていうんだ。よろしく」

と、きれいに片付けられた空席に視線を落とし、指差した。

「P&Wコーポレーションから出向してきました、片桐つむぎです。よろしくお願いします」

「出向か。一緒だね。オレもいろんな会社で出向して流れついたって感じ。時宗とはいろいろ世話になった仲なんでね」

「そうなんですね」

「片桐ちゃんか。ふーん」

と、また二階堂さんがじろじろわたしをみていると、藤崎社長が会社にやってきた。

「つむぎさん、おはようございます。おや、星彦、来てたのか」

「ああ。新しい子が入ったって聞いてさ」

と、二階堂さんはわたしにむかっておもいっきりニヤリと笑っている。

恥ずかしくなってわたしは下を向いた。

「時宗、いい子連れてきたんだね」

「うらやましいでしょう。つむぎさんには一切、手を出さないでくださいね」

「わかっているよ。時宗は夢中になりやすいな」

夢中になりすぎる。二階堂さんの言葉がひっかかる。思わず顔をあげると、

「気をつけなよ。こいつ、狙った獲物は逃がさないタイプだから」

二階堂さんは、ウィンクしながら右の親指を上にたて、いえい、といいながら藤崎社長につきつける。

「星彦に言われたくないね」

そういって、藤崎社長は二階堂さんをみて、くすくすと笑っている。
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